koss (社長)
Blu-ray の映画ソフトを買うとパッケージ内に10~20文字の認証コードが書かれた紙が封入されていることがある。
これをWebサイトで入力することで、関連する映像を視聴・ダウンロードできる。提供される映像コンテンツはおおむねパッケージとして購入した映画本編だ。力の入れ方に濃淡はあるが、ハリウッド各社ともこの手のサービスを提供している。
その多くは、何らかの形でUltraVioletと言うサービスを利用している。UltraVioletは映画会社を横断して作品を扱っているサービスで、「パッケージを買ったなら視聴権を持つことができる。だから、どんなデバイスからでも視聴できるようになるべき。1つのアカウントですべて管理できるべき」との理想を具体化したものだ。その割には少なくとも日本では知名度は高くない。
そのUltraVioletを技術的背景にしてワーナー・ブラザースが独自に提供しているFlixster Videoは手堅く、まずまずの使い勝手を提供してはいるが、UltraVioletの理想からは一旦離れてしまうし、こちらも日本では大きく使われているとは言えず、あくまで「ワーナーが、ネットとの付き合い方を模索している」と言う佇まいだ。そんな現時点にあって、ひとり気を吐いているのがディズニーのMovieNEXだ。
ディズニー MovieNEX
調査のために発売直後の『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』BDを購入してみた。
他社と同じく、MovieNEXサイトからパッケージに封入されたMagicコード(認証コードのこと)を入れる方式だが、提供されるコンテンツがまず違う。
いわゆる「特典映像」の類が充実している。さらにスピンオフ作品の一部や予告編、グッズのプレゼントなどの形で横への誘導を、しかもユーザーにとって嬉しい形で実施している。
もちろん、本編映像のデジタルコピーもここから利用可能だ。しかし、本編は外部の動画配信サービスに委ねている。
具体的に言うと『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』はbonobo / ニコニコ動画 / Google Play と連携し、それぞれのアカウントに視聴権が与えられる形になる。このうち、bonoboと、ニコニコとGoogle Playのどちらかを選んで、つまり2つのサービスに対して視聴権を得られる。
僕はbonoboとGoogle Playのアカウントに紐づけてみたが、サイトの指示に従って進めて行くだけで、簡単に本編動画を両サービスで視聴できた。ストリーミングしか試していないが、解像度は体感でDVDより少し良いくらい。
ディズニーの戦略
ご存じの通り、ディズニーは単に映画会社と言うよりは、キャラクターや世界観を世界中に売っている企業である。あれほどの素晴らしい作品群もビジネス的にはキャラクターを売るためのツールなのだ。そしてディズニーは、ユーザーからの信頼は篤いと思っている。この絆を使えば、1つの作品からその先の商品や、また別の作品への誘導が可能で、それが次の利益を生むと確信している。だから、少なくともパッケージを一度買ってくれた(十分刈り取った)ユーザーには、大げさにサービスすることができるのだ。
一方で、本編の独自配信は、提供側にとっては重く、ユーザーにとっては利便性を損なう。つまりいいことなし。他社に委ねるのは現実的な判断である。配信会社にとっても、ディズニーほどの高価値コンテンツはユーザーを連れてくる可能性を考えるとプラス。(ディズニーから直接的な支払の有無は不明だが、無いと予想している)
ネットとネットユーザーとの距離の取り方を決めかねている他社に比べて、あまりにもはっきりとした姿勢なのがディズニーなのだ。 まあ「MovieNEX」って名前はあんまりディズニーっぽくないけどね。「Magicコード」とは対照的にね。
他社の動向
Flixsterはじめ、他社の動きももちろん気になる。時にUltraVioletの現状…HuluやNetflixなどのサブスクリプション(月額固定)サービスと絡めた動向を調査してみたいと思っている。