カムラ
今回は前回の記事で紹介した、映像への字幕付与ツール「おこ助Community」をつかってみました。
メディア・アクセス・サポートセンターの公式サイトより無償配布しているおこ助Community(以下、おこ助)。
映像への字幕付与ツールとしてどのようなものになっているのか調べてみました。
映像と一緒に、付けた字幕も一緒に再生される。今回はこの状態まで、
インストールして実際に映像の読み込み、簡単な字幕の付与〜専用プレーヤーで再生するというところまでやってみます。
仕様とダウンロード
こちらのページからダウンロードできます。
必要システム条件は以下の通り。現行のWindows PCなら全く問題なさそうです。
CPU:Intel Core i3-3240T同等以上
搭載メモリー:2GB以上(4GB以上推奨)
対応OS:Windows7 / Windows8.1 / Windows10 各32ビット&64ビット(WindowsVista以前は動作保証対象外)
OSにMicrosoft社が配布する「.NET Flameworks4.5」以上がインストールされていること
推奨画面解像度:WSXGA(1600pixel×1024pixel)以上
1GB以上の空き容量があるハードディスクドライブ(マルチメディアファイル保存用の空き容量が別途必要)
DVDが再生できるドライブ(DVDビデオなどを利用した作業に必要)
メーカー依存環境や再生するメディアによっては、別途コーデックパックなどのインストールが必要
「おこ助Community」で再生可能なメディアフォーマットは以下になります。
・映像:mpeg1/wmv/avi*/mp4*/DVDVideo*
・音声:wav/mp3/wma/CDDA*
星印は、PC環境により、後述するソフトウェアのインストールが必要です。
インストール
まずはインストーラーをダウンロードし、zipファイルとなっていますので解凍し、ウィザードに沿ってインストールします。
さて、インストールし立ち上げ…と行きたいところですが、今回はもう2つほどインストールするものがありました。
このおこ助ですが、そのまま使うとなると対応する動画ファイル形式は「Windows Media Player」に準拠しており、mpeg1とwmvのみとなっています。そのため使用している環境によっては指定のフリーソフトをインストールしなければavi、mp4、DVDVideoへの字幕の付与を行うことができません。
DVDVideoがうまく再生できないときや、PC内のほかのプレーヤーでは再生できているメディアなのに、おこ助では再生できない場合も、こちらの方法でほとんどの場合は再生可能になります
ということで、以下の2つもインストールしました。
①「ffdshow」
これはコーデックで圧縮された動画&音声ファイルを普通に再生できるようにしてくれる.メディアコンポーネント。デコーダーとして使います。
https://sourceforge.net/projects/ffdshow-tryout/files/SVN builds by clsid/generic builds/
リンク先ページ記事内にあるバージョンリストのリンクから、最新版をダウンロードします。
おこ助シリーズ側の動作に合わせる必要がありますので64bitOSをご利用の場合も必ず32bit版を使用する必要があります。
②「Haali Media Splitter」
動画を映像と音声に分離するために使用します。
http://www.videohelp.com/software/Haali-Media-Splitter
リンク先ページ中央の「Download Haali Media Splitter 23062013 (direct link)」よりダウンロードします。ダウンロードしたインストーラーは「MatroskaSplitter」という名前ですが、中身は「Haali Media Splitter」です。
※①②手順詳細:http://okosuke.jp/mediaplus/
立ち上げ〜映像(音声)ファイルの読み込み
デスクトップの上のアイコンをクリックし立ち上げ後、使用する動画や音声ファイルを選択します。
メニュー [メディア]>[開く]>[映像/音声ファイルを開く]
その際に波形あり、波形なしを選択します。
※DVDビデオの場合は、ドライブにディスクを入れた上で
メニュー [メディア]>[開く]>[DVDを開く]
※今回は商用利用可のフリー映像配布サイトMazwaiよりmp4形式の動画をダウンロードし使用しています。 http://mazwai.com/#/grid/videos/182
立ち上げ、映像ファイルの読み込みをしてみると、UIは大まかに「メディア プレビューウインドウ」「音声波形表示」「字幕編集セル」に分かれており、プレビュー映像と音声波形のタイムラインが対応します。
では、映像への字幕付与作業に進みます。
字幕の作成
まずは字幕の文字起こしです。
おこ助では、アプリ上で文字起こしをし字幕を作成する方法と、予め作成しておいた字幕txtデータを読み込む方法とがあります。txtデータで読み込んだ場合も、おこ助上で手直しなどの字幕編集が可能です。
書き起こしモードから字幕を作成する
字幕編集セル上部の「書き起こしモード 開始」をクリックすると、字幕編集セルが字幕の書き起こしモードに切り替わります。
ここで字幕の書き起こしを行います。
書き起こしでは、プレビューウインドウで映像(音声)の再生・一時停止・停止など操作し、聞き取りたいポイントを探します。
波形表示と連動しているので、細かい操作も可能です。
さて、書き起こしモードを表示させると、枠外右側に数字が表示されます。
これは行数番号ではなく、書き起こした字幕の文字数表記で、8.5や15.0という半角数を含めた全角換算された数字が表記されます。
これは一行の最大文字数が全角換算で10〜17文字にとどまるようにという、観る側の見やすさを考えた適切な文字数を意識できるような作りになっています。
他に、おこ助独自の珍しい機能として、外部アプリ「UDトーク」との連携で文字起こしができるという機能を備えています。
連携機能を実際に使用してみると、おこ助を使用しているPCと、同一ネットワーク内のUDトークが入った端末とを接続することで、UDトーク側で聞き取らせた言葉がリアルタイムで字幕テキストとして、おこ助の書き起こし画面に作成されていきます。
UDトークを使用して字幕の元となるテキストを作成し、言葉など細かい修正はおこ助上で行なうことで字幕作成の効率アップが期待できます。
既に書き起こしたテキストファイル読み込み
メニュー [ファイル]>[開く]>[書き起こしテキスト]
あらかじめ書き起こした字幕のtxtデータを選択すると、「書き起こしモード」で編集できるようになります。
※「書き起こしモード」では、空行を入れることで字幕としてどう表示するか、分割表示と段落とを区別しており、字幕と字幕の間部分に空改行を挿入して書き起こしを進めます。あらかじめ書き起こしてある場合も空行を挿入した状態のテキストファイルを作成するよう心がけておくと、後の手間が省けます。
書き起こしモードから字幕編集モードへ
字幕編集モードでは、書き起こした字幕をセルで選択、編集ボタンを押すと以下の字幕表示の編集ができるようになります。
・継続記号の挿入 (全角ダッシュ「―」)
・斜体
・文字色の変更
・ルビの挿入
・字幕の横書き/縦書き切り替え、字幕位置変更、行頭/中央/行末揃え変更
ここで必要に応じて成型、配置の変更を行なうと、次に字幕挿入に進みます。
字幕の挿入 イン・アウト編集
字幕挿入は、一般的な映像編集ソフトを使用している方なら親しみやすい、タイムライン上でのイン・アウト編集でおこないます。
字幕のインポイントとアウトポイントのタイミングを、プレビューウインドウの映像と音声、波形表示をみて決めます。
キーボードのIキーとOキーでそれぞれイン・アウトのタイミングを設定します
設定したイン点とアウト点は、字幕編集セルでそれぞれクリップ上の時間が反映され、[Dur]項目にはその字幕の表示継続時間が表示されます。鑑賞者が字幕を見やすい継続時間を心がけます。
すべての字幕の配置挿入が済むと再生・エクスポートに進みます。
エクスポート・字幕を付与した映像/DVDの再生
さて、おこ助で字幕を付与した映像ファイル(またはDVD)ですが、その映像ファイルには字幕は表示されません。
字幕の”付与”と説明してきましたが、おこ助自体は映像ファイルには触れず、その映像の再生時間に対応した字幕ファイルを作成するだけ、映像と字幕の紐付けをしているだけ、というものだからです。
したがって、再生鑑賞はおこ助の「フル画面モード」でプレビュー再生で鑑賞するか、おこ助で作成した字幕ファイルに対応している再生プレーヤーで再生させるという方法で、作成した字幕付き映像を鑑賞します。
※有償Pro版の「おこ助Pro3」ではYouTubeなどで互換性のある字幕ファイルフォーマットの出力にも対応しています。
対応する再生プレーヤーは、おこ助と同じメディア・アクセス・サポートセンター(MASK)から提供されている「おとみプレーヤー」です。
otomi.link
※「おとみプレーヤー」のダウンロードは上記リンクより新規ユーザー登録(無料)し、そこからダウンロードすることができます。
ダウンロードし再生環境ができたら、おとみプレーヤーで再生できるよう、おこ助で作成した字幕ファイルをエクスポートしましょう。
Ctrl+Sで保存した後、
メニューの [保存する]>[おとみ おきく形式で保存] で出力します。
出力したファイルを開くと、おとみプレーヤーが立ち上がり読み込まれます。
映像ファイルは、メニューから[ファイル]>[映像/音声ファイルを開く] で読み込みます。
(DVDも同じ手順で、[ファイル]>[DVDを開く]を選択し、本編再生へ進みます)
読み込み完了後、読み込まれた字幕ファイルと共に再生することで、字幕つきの映像をフル画面で鑑賞することができます。
まとめ
触れてみると、思った以上に簡単に字幕を付与することができました。
今回はDVDVideoへの字幕付与作業は割愛しましたが、こちらも同じ手順で簡単に作成することができます。
ただしブルーレイには対応していません(Pro版も再生できるメディアはCommunityと同じでブルーレイは非対応です)。
ただ、前の記事でも触れた通り「おこ助」の開発サポートは終了してしまいました。ですがバリアフリー映像関連の講習会などでは聴覚障害や高齢者向けの映像字幕作成ツールとして普及活動もまだ行われているようでした。
「おとみプレーヤー」のサイトでは、有志の方が作成した字幕ファイルが配布されています。
気になる方は対応するDVDを用意し鑑賞してみてはいかがでしょうか。
カムラ
アールテクニカで映像技術担当。大阪の芸術大学で映像を学んだ後、社長に拾っていただきジョイン。社内では映像系のサービスやアプリ企画を作っています。