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Raspberry Piで利用できる軽量Linuxを試す

Author

コイデマサヒロ

Raspberry Pi で利用できる軽量なLinuxディストリビューションを紹介します。

標準のRaspbianには、さまざまなソフトがプリインストールされています。それらを全て使うわけではありませんので、SDカードの容量を無駄に食われてしまい勿体無いです。特定の用途のためにRaspberry Piを使うことを考えている場合など、自分なりの設定が必要なケースなどでは、できるだけピュアな環境のほうが都合が良いこともあります。

そこで今回は、

  1. Linux系OS
  2. 初期状態でミニマムな構成のディストリビューション。
  3. 基本はデスクトップ環境での利用。

という観点で4つほどディストリビューションを選んでみました。

実際には、多くの部分を自分でセットアップする必要があるため大変なところもありますが、慣れてくると自分の使いやすい環境を構築できるため、かえって使いやすい場合も多いでしょう。是非試してみて下さい。尚、とにかくSDカードの空き容量を増やしたいという場合は、標準Rasbianをインストールして不要なものをアンインストールする方が良いです。

Raspbian Lite

・ダウンロードサイト
https://www.raspberrypi.org/downloads/raspbian/

Liteは通常のRaspbianからデスクトップ環境を省いてヘッドレス使用を前提としたものです。デスクトップ環境での利用を前提としたソフトウェア類や、一部のコマンドラインツールなども省かれています。

Liteに必要最低限なデスクトップ環境をインストールすれば、目的を満たすことができるはずです。似たようなことを考え、本家のフォーラムで情報を公開している人がいました。
https://www.raspberrypi.org/forums/viewtopic.php?f=66&t=133691

情報はたまにアップデートされているようで、今ではかなり充実した情報です。ヘッドレス仕様の環境にデスクトップ環境を築くための方法ということで、今回紹介する他のディストリビューションでも応用が効く情報です。

僕が普段Raspberry Piを使うときは、LITEにLXDEを入れて使っています。標準のRaspbianもLXDEのカスタマイズです。僕は、LXDEのテーマに clearlooks-phenix-theme をインストール(sudo apt-get install clearlooks-phenix-theme)して利用することが多いです。LXDEに入っている標準テーマだとGTK+3で作られたアプリのUIがおかしくなるよう場合があるためです。

Liteは基本的なセットアップがされていますので、自分でデスクトップ環境を構築してみたいという場合に使いやすいと思います。 

minibian

・サイト/ダウンロードサイト
https://minibianpi.wordpress.com/
https://sourceforge.net/projects/minibian/ (ダウンロードサイト)

Raspbian派生ではありますが、OSとして動くための必要最低限なものしかない状態を目指しているようです。LITEよりさらにいろいろ省かれています。こちらもヘッドレス仕様です。

デスクトップ環境を築く場合は、上記のLITEの方法が役に立ちます。デスクトップ環境インストールすると、あまりにもいろいろなものがインストールされるので、せっかくのミニマムな環境がスポイルされたような気になってしまいますが(笑)。

本当にミニマムなので基本的な設定でさえ自分でしないとならない場合が出てきます。慣れていないと必要な設定がなにかすらわからない場合もでてきますので、上級者向けといえるでしょう。利用目的が絞られていて、全て自分でセットアップしたいという場合におすすめです。 

DietPi

・サイト/ダウンロードサイト
http://dietpi.com/

DietPiもヘッドレス仕様のディストリビューションです。またRaspberry Pi以外にもいろいろなマイコンボードに対応しているのも特徴です。

コマンドラインベースですが、独自のGUIベースの専用のソフトウェアインストール、システムセットアップ、アップデート等の仕組みを持っており、ミニマムさを持ちながらも至れり尽くせりな環境です。DietPiという名前からするとミニマムな環境を目指していると思われますが、シンプルさを保ちつつ使いやすさも備えています。

独自インストールシステムでは、Raspbianと同様のAPTパッケージシステムの他、DietPiの開発元で独自にビルドしたものもあるようです。カーネルも独自ビルドです。ほとんどのセットアップが対話形式で進められるので慣れない設定でも分かりやすいと思います。それでいて、OSイメージのサイズが90MB(圧縮状態で)というのも驚きです。minibianより小さい!

サーバー的な環境として利用することを前提としているようで、独自インストールシステムではその手のソフトウェアのサポートが充実しています。メディアサーバーやプライベートクラウド的な利用には最適だと思います。

初回起動時に各種セットアップが自動的に走りますが、ユーザーの領域をUSBドライブに指定することもできます。サーバー用途だと読み書き回数の制限があるSDカードよりUSB経由でハードディスクなどに接続したほうが安心ですので気が効いていますね。 

デスクトップ環境も標準でLXDE、XFCEのインストールもサポートしています。LITEのところで紹介されている方法よりミニマムなインストールになっています。必要最低限なツール類もインストールされます。また標準ブラウザとしてFirefoxがインストールされます。


ミニマムな環境が良いけど使いやすさも欲しい、自宅でサーバー立てたいという場合に向いていると思います。 

ArchLinux ARM

・サイト

https://archlinuxarm.org/platforms/armv8/broadcom/raspberry-pi-3

 ArchLinuxはとっかかかりの敷居は高いですが、慣れてしまえば本家Raspbianよりも使いやすいかもしれません。

以前は、Raspberry Pi本家からリンクもされていたようですが、アップデートポリシーなどのコンセプトが相容れないため本家からの紹介は無くなったようです。

このことからもわかるようにArchLinuxは独自の理念のもとに開発されています。Wikipediaの紹介からもそのポリシーをうかがい知ることができます。
https://ja.wikipedia.org/wiki/Arch_Linux

インストールは少し大変です。OSイメージをSDカードに焼くというシンプルな方法は取っていません。さらに、インストールしてからもいろいろセットアップする必要があります。パッケージシステムもDebian系とは別の独自のものです。使い勝手が全く異なるということは無いのですが、慣れは必要です。

自分でインストール、セットアップするにはこのあたりの情報が役立つと思います。
http://ostipstricks.weebly.com/arch-linux-pi.html
https://www.zybuluo.com/yangxuan/note/344907

起動SDカードの作成はLinux環境の方が楽なので、標準のRaspbian上で作業するのが良いと思います。
デスクトップ環境を持ちませんが、LXDE等をインストールして使用することができます。パッケージシステムが違うだけで方法としてはLite等と同じです。

ArchLinuxのメリットは、それなりに最新のソフトウェアが使えるということでしょうか?Debian系は安定版を使うという前提であるため、最新版を使うためには自分でビルドする必要があったりします。ArchLinuxでは、なるべく最新になるようになっていたり、ソースを落としてビルドするようになっていたります。

僕もまだそれほど使いこんでいませんが、Raspberry Piとは相性が良いのではないか思っています。海外だとArchLinuxで使う人はそれなりにいるようです。

最後に 

標準のRaspbianもRaspbian LiteもminibianもDietPiも、基本はDebianをベースにしており、兄弟分といえます。ArchLinuxは、もう少し志向がことなる親戚という感じです。どれも同じLinuxですし、同様なデスクトップ環境を構築できますので、使い勝手として大きく異なることは無いです。Raspberry PiではSDカードにOSをインストールすれば良いのでPC用のLinuxに比べると簡単に試すことができますので、是非いろいろ試してみて下さい。

※おまけ情報

・簡単にいろいろな環境を試したい場合にオススメ。

berrybootというサイトを紹介します。
http://berryboot.alexgoldcheidt.com/
いろいろな人が作ったRaspberry Piで利用できるSDカードのイメージがアップされています。利用用途に応じたセットアップだったり、いろいろなOSだったりがアップロードされています。ArchLinuxはイメージの配布が無いため、ここで探せばSDカードに焼いてすぐ使ってみるということができます。まずは試したいという場合に便利でしょう。

・標準Raspbianに近づけるためにインストールしたいツール

標準Raspbianではインストールされているが、自前でデスクトップ環境を構築した場合に無いものをピックアップしました。必ずしも必要というわけではありませんが。

・raspi-configのデスクトップ版
sudo apt-get install rc-gui

・メニュー編集関係
sudo apt-get install alacarte
手動でやったほうがスムーズですが...

・オーディオデバイス設定ツール(ALSA)
sudo apt-get install pimixer
コマンドラインベースの
sudo alsamixer
でも同じ機能です。 alsamixerが無い場合は、sudo apt-get install alsa-utils alsa-baseでインストールできます。

・画像ビューワ。
sudo apt-get install gpicview

・アーカイバ。解答したり圧縮したり。
sudo apt-get install xarchiver

・テキストエディタ
sudo apt-get install leafpad

・プログラミング向けテキストエディタ
sudo apt-get install geany

・USB関係のユーティリティ
sudo apt-get install usb-modeswitch

・Bluetooth用ユーティリティ
sudo apt-get install pi-bluetooth

・chromium
sudo apt-get install chromium-browser
最新Raspbianでは標準ブラウザになりました。

 

Author

コイデマサヒロ

ディレクター、プロデューサー、ギタリスト。mimiCopyをはじめ弊社リリースの全てソフトウェア製品の企画を担当。ネイティブアプリ開発がメインでOS問わず対応可。dubバンドのギタリストとしても活動中。

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