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Raspberry Piは実用に(も)舵を取る

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koss(社長)

プロジェクター、ディスプレイ、デジタルサイネージを使った映像ソリューションを提供しているNEC Display Solutions Europeが、ラズパイを内蔵可能なデジタルサイネージ機器を発表した。

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NEC Display Solutions announces collaboration with Raspberry Pi - Portal Site NEC Display Solutions Europe GmbH
Raspberry Pi • View topic - NEC Digital Signage Screens Get Pi
ラズパイをカスタマイズ可能な内蔵STBとして利用することで、ネットワークやハードウェアとの連携を可能にする安価なソリューションが提供可能になるわけだ。

Raspberry Piの変革期

もともとは「教育用」としてリリースされたRaspberry Piも、先ごろ出荷が1000万台を突破して、次のステップを模索しているようだ。さまざまな業務の中での実用マーケットへと舵を取っているように見えるのだ。実際にRaspberry Pi財団の創設者であり、販売部門のCEOであるEben Uptonも「日本でも大口のエンタープライズ顧客が欲しい」と言っている。
【特集】Raspberry Pi財団訪問記と1,000万台出荷記念パーティ潜入レポート - PC Watch
NEC Display Solutions Europeの発表は、その動きの一つの象徴だろう。

Raspberry Pi Compute Module

NEC Display Solutions Europeの製品ではRaspberry Piの組み込み用製品である「Compute Module」が使われている。各種インタフェース、電源、GPIOの個別のコネクタが省かれ、代わりにSO-DIMM端子にすべてのインターフェースがまとめられているものだ。制御対象の機器の基盤に刺して利用する形が想定されている。
省かれたコネクタを一通り装備した開発用ボードに刺すと、通常のラズパイとほぼ同等になる。(ただし、基盤が少し大きい)
Compute Module Kit | ラズベリーパイ コンピュートモジュール 開発キット | Raspberry Pi 【通販RS】
ちなみにCompute Moduleを使うと、通常のラズパイより有利な点がある。CSI2(カメラ入力)インターフェースが通常のラズパイでは2レーン(1080p@30相当)までなのに対して、Compute Moduleでは4レーン(1080p@60相当)まで使える。開発ボードを入れると少しコストが上がるが、映像処理用途を考えると素晴らしく有望だ。

新しいCompute Module

2014年に組み込み・産業用途として発表されてからこれまで、Compute Moduleは初代ラズパイB+相当(512MB)のものしか存在していなかったが、今回の発表の中で使われているのは、ラズパイ3相当ものとされている。詳細は発表されていないが、本当にラズパイ3ベースならCPUパワーは約5倍、GPUパワーは2倍、メモリは2倍。これまで盛り上がりにかけていたCompute Moduleに、こっそりと新しい世代がやってきたのである。ラズパイ財団が、エンタープライズ=量産規模の製品への組み込み分野に力を入れようとしていることがここからも分かる。

もちろん、この分野には先行する製品がいくつもあるが、1000万台と言う圧倒的な出荷数とその先にあるユーザーベース、それらによるナレッジーベースの規模と成長性は他のプラットホームには期待にしくいものだ。ゲームは変わりつつある。

通常のラズパイはどうなのか

ところで、われわれが普段使うのは、入手のしやすさ、コスト、大きさなどの面からCompute Moduleではない通常のラズパイになるだろう。通常版については、信頼性を不安視して「仕事では使えない」とする声もあるが、多くのケースでは実際には問題を回避し、実用できると僕は考えている。それらの回避策としてソフトウェア的、ハードウェア的に手を打てるのもオープンなシステムだからこそだ。不安点とその対策は別のエントリーでまとめてみたい。


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koss(社長)

アールテクニカ株式会社 代表取締役。株式会社エイガアルライツ取締役として漫画『コブラ』などの寺沢武一作品を世に送り出すプロデューサーでもある。 「映画 / 音楽 / 生き物 / 宇宙 x IT」を人生のテーマとする。 昆虫の変態専門チャンネル「コーカサスTV」をUstreamにて配信中。みんな見てくれよな!

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