中村@アールテクニカ
アールテクニカの中村です。
弊社は以前よりWindowsおよびMac両対応のアプリ開発を行なってきましたが、最近では、iOSやAndroidの開発も多くなっています。
複数プラットフォームに対応する場合、それぞれの環境ごとにコードを書いていてはコストがかかってしまうので、同一ソースで複数のプラットフォームに対応できる開発環境が求められます。
対象がスマートフォンだけであれば、Cordova(旧PhoneGap)やTitaniumを使用するという選択肢もありますが、案件によっては、「PCもスマホも対応したい」、「高速化のためにネイティブコードで開発したい」という要求もあるでしょう。
その様な要求に答えられそうな開発環境として、Qt(キュート)を使ってみたいと思います。
Qtについて
Qt(キュート)とはC++によるマルチプラットフォーム対応のフレームワークライブラリです。当初はデスクトップOSのみ対応でしたが、現在ではiOSやAndroidにも対応しています。
また、Qt Creatorという統合開発環境が用意されており、ソースコードやGUIのビジュアル編集が可能で、ビルド・デバッグまでもこのツールだけで出来てしまいます。
開発対象OSはWindows、Mac OSX、iOS、Androidとします。
WindowsではMacとiOSの開発はできないため、開発環境としてWindowsとMac OSXの両方を用意します。
今回は以下のOSで開発環境を構築します。
- Windows 10 Pro 64bit
- Mac OSX 10.11.4 El Capitan
他には以下のソフトウェが必要になります。
- Qt
- Java Development Kit (JDK)
- Ant
- Android Studio (Android SDK/NDK)
- Xcode ※Mac OSXのみ
Windowsの開発環境構築
まずは、Windowsで開発環境を構築しましょう。
Java Development Kit (JDK)
下記サイトからWindows用をダウンロードしインストールします。
http://www.oracle.com/technetwork/java/javase/downloads/index.html
Ant
下記サイトの左のメニューから「Download」→「Binary Distributions」 を選択し、「.zip archive 」をダウンロードします。
http://ant.apache.org/
解凍したファイルは適当なフォルダに置きます。ここではC:\ant\ に置くことにします。
Android Studio (Android SDK/NDK)
1. Android Studio本体のインストール
下記サイトからAndroid Studioをダウンロードしインストールします。
http://developer.android.com/intl/ja/sdk/index.html
2. Android NDKインストール
Android SDKは初回起動時に最新版が自動的にインストールされますが、C/C++開発に必要なNDKは手動でインストールする必要があります。
起動画面の右側のメニューから「Configure」→「SDK Manager」でSDK設定画面を開きます。
次にSDK Toolsタブを選択し、Google USB DriverとAndroid NDKにチェックを入れます。「OK」または「Apply」でインストールが開始されます。
3. 仮想デバイス作成
Android実機がない場合や様々な解像度やOSバージョンのデバイスを試したい場合、仮想デバイス上でアプリを実行することができます。
仮想デバイス管理画面は、プロジェクトを開いた状態でないと開けないようなので、Android Studioの起動画面から、適当に新規プロジェクトを作成します。
次にメニューバーで「Tools」→「Android」→「ADV Manager」を選択し、仮想デバイス設定ダイアログを開きます。
「Create Virtual Devices」をクリックして、仮想デバイスを作成を開始します。
画面解像度やOSバージョンなどをカスタマイズできますが、ここでは、Nexus 5を選択し他はデフォルト設定で仮想デバイスを作成しておきます。
Qt
1. Qtインストール
下記サイトからインストーラをダウンロードし実行します。
http://www.qt.io/download-open-source/
インストーラ起動時にMSVCR120.dllがないというメッセージが出た場合は、下記サイトからvcredist_x86.exeをダウンロードしてインストールします。
https://www.microsoft.com/ja-jp/download/details.aspx?id=40784
コンポーネント選択画面でMinGW 4.9.2 32bitと Android ARMv7にチェックを入れてインストールを続行します。
2. パス設定
インストールが完了するとQt Creatorが起動します。
メニューバーから「ツール」→「 オプション」で設定ダイアログを開き、左側のメニューで「Android」を選択します。
各種パスを下記のように設定します。
※デフォルトのインストール先を選択した場合です。
JDKの場所 | C:\Program Files\Java\jdk1.8.0_77 ※JDKのバージョンにより異なります |
---|---|
Android SDKのパス | C:\Users\ユーザ名\AppData\Local\Android\sdk |
Android NDKのパス | C:\Users\ユーザ名\AppData\Local\Android\sdk\ndk-bundle |
Ant 実行ファイル | C:\ant\bin\ant.bat |
Mac OSXの開発環境
続いてMac OSX で開発環境を構築しましょう。
Java Development Kit (JDK)
下記サイトからMac OS X用 をダウンロードしインストールします。
http://www.oracle.com/technetwork/java/javase/downloads/index.html
Ant
homebrewでインストールします。
ターミナルから以下のコマンドでインストールします。
brew install ant
homebrewがインストールされていない場合は、
ターミナルから以下のコマンドでhomebrewをインストールしてください。
/usr/bin/ruby -e "$(curl -fsSL https://raw.githubusercontent.com/Homebrew/install/master/install)"
Android Studio (Android SDK、Android NDK)
1. Android Studio本体のインストール
下記サイトからAndroid Studioをダウンロードしインストールします。
http://developer.android.com/intl/ja/sdk/index.html
Qt
Qtインストール
下記サイトからインストーラをダウンロードし実行します。
http://www.qt.io/download-open-source/
コンポーネント選択画面でiOSと Android ARMv7にチェックを入れてを確認しインストールを続行します。
パス設定
インストールが完了するとQt Creatorが起動します。
メニューバーから「Qt Creator」→「設定」で設定ダイアログを開き、左側のメニューで「Android」を選択します。
各種パスを下記のように設定します。
※デフォルトのインストール先を選択した場合です。
JDKの場所 | /Library/Java/JavaVirtualMachines/jdk1.8.0_77.jdk/Contents/Home ※JDKのバージョンにより異なります |
---|---|
Android SDKのパス | /Users/ユーザ名/Library/Android/sdk |
Android NDKのパス | /Users/ユーザ名/Library/Android/sdk/ndk-bundle |
Ant 実行ファイル | /usr/local/bin/ant |
以上で開発環境の構築は完了です。
次回は実際にアプリを作成してみます。